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東京高等裁判所 昭和58年(行ケ)239号 判決

原告

インターナシヨナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーシヨン

被告

特許庁長官

主文

特許庁が昭和50年審判第9911号事件について昭和58年6月23日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第1当事者の求めた裁判

1  原告

主文同旨の判決

2  被告

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

との判決

第2請求の原因

1  特許庁における手続の経緯

原告は、名称を「電子写真装置」とする発明(以下、「本願発明」という。)につき、1970年12月1日アメリカ合衆国においてした特許出願に基づく優先権を主張して、昭和46年10月19日に特許出願(昭和46年特許願第82207号)したところ、昭和50年7月3日拒絶査定を受けたので、同年11月25日審判を請求し、昭和50年審判第9911号事件として審理され、昭和57年5月8日出願公告(特許出願公告昭57―21706号)されたが、特許異議の申立があり、昭和58年6月23日「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決がなされ、その謄本は同年8月17日原告に送達された。

なお、原告のため出訴期間として3カ月が附加された。

2  本願発明の要旨

光導電体に対し、帯電、結像及び転写を行なう手段を有する電子写真装置において、単一のステーシヨンにおいてのみ上記光導電体と結合するように配置され第1のモードにおいて上記光導電体上の像を現像し第2モードにおいて上記光導電体をクリーニングするための、磁気ブラシ及び該磁気ブラシに対して一定のバイアス電圧を印加するバイアス印加手段よりなる現像兼クリーニグ装置と、上記電子写真装置を動作中上記第2のモードで上記現像兼クリーニング装置を動作させるために、上記帯電を行なう手段の動作を抑止すると共に上記光導電体上の電荷を放電させる装置とより成る電子写真装置。

(別紙図面(1)参照)

3  審決の理由の要点

本願発明の要旨は、前項記載のとおりである。

これに対して、ドイツ公開特許第1965293号明細書(1970年9月17日公開、以下「引用例」という。)には、Ⅰ 8頁23行ないし23頁9行に、光導電体に対し、帯電12、結像13及び転写16、17を行なう手段を有する電子写真装置において、単一のステーシヨンにおいてのみ光導電体と結合するように配置されたカスケード装置14及び該カスケード装置に対して一定のバイアス電圧(22頁11行参照)を印加するバイアス印加手段26より成る現像兼クリーニング装置と、この電子写真装置の動作中光導電体の電荷を放電させる装置23とより成る電子写真装置(別紙図面(2)参照)が記載されており、また、Ⅱ 23頁10行ないし24頁6行に、前記カスケード装置に代えて磁気ブラシを用いることが記載され、さらに、Ⅲ 27頁8行ないし19行に、前記現像兼クリーニング装置が、第1のモードにおいて光導電体上の像を現像し第2のモードにおいて光導電体をクリーニングする、2モード法に使用し得ることが記載されている。

すなわち、引用例の前記Ⅰ、Ⅱ、Ⅲで指摘した記載事項を総合すれば、引用例には、光導電体に対し帯電、結像及び転写を行なう手段を有する電子写真装置において、単一のステーシヨンにおいてのみ前記光導電体と結合するように配置され第1のモードにおいて前記光導電体上の像を現像し第2のモードにおいて前記光導電体をクリーニングするための、磁気ブラシ及び該磁気ブラシに対して一定のバイアス電圧を印加するバイアス印加手段より成る現像兼クリーニング装置が明記されているものと認められる。また、第2のモードはクリーニングのみを行なうのであるからクリーニングに必要な行程以外の動作、すなわち帯電を行なう手段の動作を抑止することは当然であり、かりに第2モードで帯電を行なつたとすれば磁気ブラシはトナーを光導電体に付与することになつてクリーニングを行ない得ないことは明らかである。さらに、Ⅲの場合において、電荷を放電させる装置23を停止させる旨の記載はないからこれによる放電は第2モードでも行なつているものと認められる。つまり、引用例には、電子写真装置の動作中第2のモードで現像兼クリーニング装置を動作させるために、帯電を行なう手段の動作を抑止すると共に光導電体上の電荷を放電させる装置も記載されていることになる。

以上の検討によれば、本願発明のすべての構成が引用例に記載されているものと認められるので、本願発明は引用例記載の発明と同一であつて特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。

4  審決を取り消すべき事由

引用例に審決認定のとおりの記載があることは認めるが、本願発明は引用例記載の発明と同一であるとした審決の認定、判断は誤りであつて、審決は違法として取り消されるべきである。すなわち、審決は、引用例記載の現像兼クリーニング装置が2モード法(2サイクル法)に使用された場合、「第2のモードはクリーニングのみを行なうのであるから、クリーニングに必要な行程以外の動作、すなわち帯電を行なう手段の動作を抑止することは当然であり、かりに第2モードで帯電を行なつたとすれば磁気ブラシはトナーを光導電体に付与することになつてクリーニングを行ない得ないことは明らかである。」旨認定し、右認定を前提として本願発明は引用例記載の発明と同一であるとしているが、次に述べるとおり、右認定は誤りである。

1 引用例記載の発明は、帯電、露光(静電潜像形成)、現像、転写、清掃の各工程を光導電体から成るドラムが1回転する間に行う、いわゆる1サイクル電子写真法(以下「1サイクル法」という。)において、後述の特定の条件のもとでは、通常の現像手段自体が現像作用のほかに前のサイクルでドラム表面上に残留したトナー像を除去し、ドラム表面のクリーニングを行なうという知見に立脚し、1サイクル法では通常別個に設けられているクリーニング装置を省略する構成にした点に特徴があるのであつて、引用例の明細書全頁のうち審決摘示の引用箇所Ⅲの部分(明細書第27頁第8行ないし第19行、以下「引用箇所Ⅲ」という。)を除いた残りの部分は、現像兼クリーニング装置を使用した1サイクル法について述べているのである。

ところで、引用例には、右装置を使用して現像兼クリーニング作用を行なうための条件として、カスケード現像器と光導電体から成るドラム表面との相対的角度、現像電極とこの表面との相対的角度、光導電体上の像領域及び無像領域と現像電極との間の電位差、トナー粒子の粒度、濃度、キヤリア粒子の粒度、帯電電圧の大きさ、露光強度と帯電電圧の関係が記載されており、引用例記載の発明においては、これらのパラメータの選択により現像兼クリーニング作用が行なわれることが示されている。

引用例における右教示によれば、ドラム表面上の残留トナー像が次のサイクルで除去されるものであれ、あるいはドラム表面が残留トナー像の上に重畳して現像されるものであれ、トナー像を残留させたドラム表面部分は、次の電子写真動作中の帯電装置及び露光装置を経由して現像兼クリーニング装置に到達する、換言すれば、残留トナー像の除去、すなわちクリーニング作用が行なわれる場合でも、ドラム表面に対する帯電装置及び露光装置の動作は抑止されていないのである。

2 なるほど、引用例の引用箇所Ⅲには、現像兼クリーニング装置を第1のモード(サイクル)において光導電体上の像を現像し、第2のモード(サイクル)において光導電体をクリーニングする、2モード法(2サイクル法)に使用しうることが記載されているが、これをどのように具現するかについては、引用例には何ら示唆するところがない。このような場合には、引用例の全体的な教示にしたがつて考えるのが常識に適うものというべきところ、前述のとおり、引用例には、帯電装置、露光装置を通常の複写機の動作状態に維持しながら、前述の各種のパラメータを巧みに選択することにより、現像位置において現像作用及びクリーニング作用が達成できるということが教示されているのであるから、2サイクル法においても帯電装置及び露光装置の動作は抑止されておらず、帯電を行なつても、クリーニング作用が十分に達成されるよう前述の各種のパラメータが予め選択、調節されているものと解するのが相当である。

この点について、被告は、転写後の残留トナー像のクリーニングに際して、残留トナー粒子に付随する電荷を除去した状態でクリーニングを行なうことは周知であつて、技術常識に属する事項であることを前提として、引用例記載の発明において、2サイクル法で帯電作用は抑止されるものとみるべきである旨主張する。

被告の主張する右技術が周知であることは認めるが、前述のとおり、引用例記載の発明は、各種のパラメータを選択、調節することにより、クリーニング装置を備えなくとも現像もクリーニングも行なわれるという、全く従来の技術常識に反する知見に基づくものであるから、このような知見による教示の範囲を逸脱して引用例の記載を解釈すべきではなく、被告の右主張は失当というべきである。

3 審決は、引用例の記載に関し、「Ⅲの場合において、電荷を放電させる装置23を停止させる旨の記載はないからこれによる放電は第2モードでも行なつているものと認められる。」旨説示しているが、右説示にしたがえば、引用例には、2サイクル法の場合でも帯電装置、露光装置の動作を抑止する旨の記載はないことになるのであるから、引用例記載の発明において、第2モードでも帯電及び露光作用は行なわれているものと解すべきであつて、この点からいつても、審決の「第2モードでは帯電装置の動作を抑止するのが当然である。」旨の認定は誤つている。

第3被告の答弁及び主張

1  請求の原因1ないし3の事実は認める。

2  同4は争う。引用例には審決認定のとおりの記載が存するところ、右記載を前提として、本願発明は引用例記載の発明と同一であるとした審決の認定、判断は正当であつて、審決に原告主張の違法はない。

1 引用例の引用箇所Ⅲには、「そのサイクル法はその再循環の為に幾分一層複雑な機構及び電気回路を含んでいる」と記載されているが、右記載は、2サイクル法においては、1サイクル法を実施する場合に必要とされる機構及び電気回路以外に何らかの機構及び電気回路を必要とするものであるが、そのようなことは、当業者が2サイクル法を実施するに際し技術常識に基づいて考慮すればよい設計事項であるということを意味している。この趣旨にしたがえば、2サイクル法においては、1サイクル法について記載された電子写真の各工程の装置をそのまま使用することはできず、2サイクル法の実施に際して必要とされる機構(これは主として回転制御機構であろう。)及び電気回路(帯電装置の動作を停止させるスイツチ)は当然付加されるべきものであるということができる。

したがつて、引用箇所Ⅲの右記載内容によれば、引用例記載の発明に係る1サイクル法で使用する現像兼クリーニング装置を2サイクル法に使用するに当たりこれをどのように具現するかについて、ただ引用例の全体的な教示にしたがつて考えるべきである旨の原告の主張は理由がないものというべきであるし、もともと1サイクル法につき示された技術をそのまま2サイクル法に具体化しえないことは明らかである。

原告は、2サイクル法においても帯電装置及びクリーニング装置の動作は抑止されておらず、帯電を行なつてもクリーニング作用が十分に達成されるよう各種のパラメータが予め選択、調節されているものと解釈するのが相当である旨主張するが、原告主張のようなパラメータは引用例には何ら記載されておらず、当業者の常識により理解することも不可能なことであるから、原告の右主張は理由がない。

2 ところで、転写後の残留トナー像のクリーニングに際して、残留トナー粒子に付随する電荷(感光体内に存在する電荷及びできれば残留トナー粒子内に存在する電荷)を除去した状態でクリーニングを行なうことは周知であつて、技術常識に属する事項である。

右技術常識にしたがえば、引用例記載の発明における放電装置23による放電作用の後に現像兼クリーニング装置14によるクリーニング作用が直ちに存在すると考えるのが当然であつて、審決もこの考え方にしたがい、2サイクル法においては帯電装置による動作は抑止されるものと判断しているのであつて、正当である。

第4証拠関係

証拠関係は、本件訴訟記録中の書証目録記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。

理由

1  請求の原因1ないし3の事実は、当事者間に争いがない。

2  そこで、審決を取り消すべき事由の存否について検討する。

1 引用例には、(1) 光導電体に対し帯電12、結像13及び転写16、17を行なう手段を有する電子写真装置において、単一のステーシヨンにおいてのみ光導電体と結合するように配置されたカスケード装置14及び該カスケード装置に対して一定のバイアス電圧を印加するバイアス印加手段26より成る現像兼クリーニング装置と、この電子写真装置の動作中光導電体の電荷を放電させる装置23とより成る電子写真装置(別紙図面(2)参照)、(2) 前記カスケード装置に代えて磁気ブラシを用いること、(3) 前記現像兼クリーニング装置は、第1のモードにおいて光導電体上の像を現像し、第2のモードにおいて光導電体をクリーニングする2モード法に使用しうることがそれぞれ記載されていること、右(1)ないし(3)の記載事項を総合すると、引用例には、光導電体に対し帯電、結像及び転写を行なう手段を有する電子写真装置において、単一のステーシヨンにおいてのみ前記光導電体と結合するように配置され、第1のモードにおいて前記光導電体上の像を現像し、第2のモードにおいて前記光導電体をクリーニングするための磁気ブラシ及び該磁気ブラシに対して一定のバイアス電圧を印加するバイアス印加手段より成る現像兼クリーニング装置が記載されていると認められることは、当事者間に争いがない。

そして、成立に争いのない甲第3号証によれば、引用例の第27頁第8行ないし第19行(引用箇所Ⅲ)には、詳しくは、「機能的清掃媒質として現像剤を使用する1回通過清掃法は、また本発明に係る有利な現像―清掃法が任意の2サイクル静電写真法において現像法及び清掃法の両者として使用しうることを示している。そのような2サイクル法において、現像は第1サイクル中に行なわれ、清掃は静電像支持体表面から残留トナー像を除去するためだけのサイクルである第2サイクル中に行なわれる。前節で述べた2位置法と違つて、そのサイクル法はその再循環のために幾分一層複雑な機構及び電気回路を含んでいる以外は本発明の良好な方法のすべての目的を達成する。」と記載されていることが認められる。

2 そこで、引用例記載の発明に係る電子写真装置の現像兼クリーニング装置が2モード法(2サイクル法)に使用された場合に、第2のモードにおいては帯電を行なう手段の動作は抑止されているか否かについて検討する。

前掲甲第3号証によれば、「従来周知のゼログラフ装置においてはドラム表面は代表的には爾後のゼログラフサイクルの帯電及び露光工程が遂行される前に他の清掃工程を必要とする。」(引用例第10頁第11ないし第13行)ものであつたのに対し、引用例記載の発明は、帯電、露光、現像、転写、清掃の各工程を光導電体から成るドラムが1回転する間に行う1サイクル法において、「現像剤が板の表面に沿つてカスケードする時に、静電潜像が現像されて、かつ、驚くべきことに前のサイクルからのトナー粉末の残留像はカスケードさせられる現像剤の機械的、摩擦電気及び静電作用の組合せによつて除去される。現像剤粉末は物理的に叩いて光導電体の表面から残留トナー粉末を引き離し、キヤリア粉末のトナーを有さない部分は残留トナー粉末を静電的に吸引して引き剥がす。静電潜像を現像しながら同時に残留像を除去するカスケード方法の驚異的な性能は本発明の諸目的を達成する際に最も有利である。」(同第10頁第18行ないし末行)という知見に基づいて、1サイクル法では、通常、現像装置とは別個に設けられているクリーニング装置を省略する構成にしたものであることが認められる。

右のとおり、引用例には、前のサイクルからの残留トナー像の除去は、カスケードさせられる現像剤の機械的、摩擦電気及び静電作用の組合せによつてなされる旨の記載はあるものの、右除去作用が、同時に行なわれる静電潜像の現像との関連においてどのような原理に基づいて奏されるものであるのかについての詳細な説明はない。すなわち、1サイクル法においては、当然のことながら、各サイクルにおいてコロナ放電装置12(前記ドラムの表面を成す光導電体に対し帯電を行なう手段)、位置13の投射装置(右光導電体に対し結像を行なう手段)の各動作は抑止されていないが、新たなサイクルにおいて行なわれる帯電、露光工程が前のサイクルからの残留トナー像の除去に作用を及ぼしているのかいないのか、作用を及ぼしているとしてどのような内容のものであるのかについて引用例には記載がなく、この点は引用例において明らかではないものといわざるをえない。

そして、前記のとおり、引用例には、残留トナー像がカスケードさせられる現像剤の機械的、摩擦電気及び静電作用の組合せによつて除去されることが「驚くべきこと」と表現されていること及び引用例記載の発明は、1サイクル法では通常現像装置とは別個に設けられているクリーニング装置を省略する構成としていることからすると、引用例記載の発明における残留トナー像の除去は、前記組合せをも含めて、技術常識により予測しえないような方法により達成されているものと考えられる。

ところで、被告は、前記のとおり、引用例には、2サイクル法の構成については、「その再循環のために幾分一層複雑な機構及び電気回路を含んでいる」と記載されていることから、2サイクル法においては、1サイクル法について記載された電子写真の各工程の装置をそのまま使用することはできず、2サイクル法の実施に当たつては、それに必要とされる機構及び電気回路(帯電装置の動作を停止させるスイツチ)は当然付加されるものである旨主張する。

しかしながら、前記のとおり、引用例記載の発明において、残留トナー像の除去作用が同時に行なわれる現像作用との関連でいかなる原理に基づいて奏されるものであるのか、新たなサイクルにおいて行なわれる帯電、露光工程が右除去に作用を及ぼしているのかいないのか、作用を及ぼしているとしてどのような内容のものであるのかが引用例からは明らかでないこと、少なくとも1サイクル法においては、残留トナー像の除去のために帯電及び露光工程は抑止されておらず、引用例記載の発明における残留トナー像の除去は、技術常識により予測しえないような方法により達成されていると考えられることからすると、たとえ2サイクル法においては、クリーニングは残留トナー像を除去するためだけの第2サイクル(モード)中で行なわれ、その再循環のために幾分一層複雑な機構及び電気回路を含んでいるとしても、帯電装置及び露光装置の動作は、当然にクリーニングに必要な工程以外のものであり、そのために、第2モードにおいては、帯電を行なう手段の動作を抑止すべき技術的手段が講ぜられているものと断定しうるかは極めて疑問であるといわざるをえない。

審決は、第2モードで帯電を行なつたとすれば、磁気ブラシはトナーを光導電体に付与することになつてクリーニングを行ないえないことは明らかであるとし、この点をも第2モードでは帯電を行う手段の動作が抑止されていることの根拠としている。

しかしながら、前記のとおり、1サイクル法においては、帯電装置の動作が抑止されることなく、一方ではクリーニング作用が行なわれているのであつて、そのことからすると、2サイクル法において、第2モードで帯電を行なつたからといつて当然にクリーニングが行ないえないということにはならないものと考えられ、審決の右立論は失当というべきである。

以上のとおりであつて、引用例記載の発明における現像兼クリーニング装置が2モード法に使用された場合、第2のモードにおいては帯電を行なう手段の動作は当然に抑止される旨の審決の認定は誤つているものというべきであり、右認定を前提として本願発明は引用例記載の発明と同一であるとした審決は違法として取消しを免れない。

3  よつて、審決の取消しを求める原告の本訴請求は理由があるから、これを認容し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第7条、民事訴訟法第89行の各規定を適用して主文のとおり判決する。

(蕪山嚴 竹田稔 濵崎浩一)

〈以下省略〉

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